アーカイブ: 2025年11月12日

デンタルラボラトリーNEWS~支え合う職人たちの現場~

有限会社永松デンタルラボラトリー

歯科技工所というと、黙々と作業する個人職人の集まりという印象を持たれがちだ。
しかし実際には、強いチームワークがなければ成り立たない。
一人ひとりの技術が合わさって初めて、患者の口の中で機能する歯ができあがる。

本稿では、技工所の“人のつながり”に焦点を当てる。

1. 技工所の役割分担

多くの歯科技工所では、分業制が確立している。

モデリング担当:石膏模型の注型と整形

ワックスアップ担当:歯の形を作る原型形成

鋳造担当:金属加工

セラミック担当:陶材築盛と焼成

研磨担当:最終仕上げ

品質管理:寸法確認と納品チェック

それぞれの工程が数時間から数日をかけて行われる。
ひとつでも精度を欠けば、全体がやり直しになる。
そのため、情報共有と確認が極めて重要だ。

2. 技工士と歯科医院の連携

歯科技工所の相手は歯科医院だ。
医師からの指示書には、形態、色調、材質、咬合関係などの情報が細かく記載されている。
しかし現場では、その“言葉の解釈”が最も難しい。

たとえば「自然な色に」という指示は、患者ごとに意味が違う。
歯の色は照明、肌色、年齢、食習慣によって異なるため、
技工士は写真・シェードガイド・経験を総合的に判断しなければならない。

3. チーム内コミュニケーション

作業工程が複雑化するほど、チームの連携力が問われる。
小さなミスをそのまま次工程に渡さない。
手書きメモや口頭確認に頼らず、デジタルシートやアプリを活用する技工所も増えている。

また、日々の「ミーティング文化」も欠かせない。
問題点をその日のうちに共有し、改善策を即実行する。
その積み重ねが、安定した品質を生み出す。

4. 職人の誇りと人間味

どんなに技術が進歩しても、最後に歯を仕上げるのは人間だ。
だからこそ、技工士たちは“人としての温度”を大切にする。
細かい仕事の中にも「この患者さんはどう噛むか」「どんな笑顔を見せるか」と想像する。
そこに人間らしい思いやりがある。

5. まとめ

歯科技工所は、無数の技術と想いが交差する場所だ。
一人の職人ではなく、チーム全体で命の一部を作り上げている。
技術だけでなく、互いを信頼し合う心こそが、最高の品質を生む源である。

歯科技工士たちは今日もまた、見えないところで人々の「笑顔の土台」を支え続けている。