アーカイブ: 2026年7月17日

デンタルラボラトリーNEWS〜使い分ける~

有限会社永松デンタルラボラトリーです!

 

~使い分ける

 

歯科技工物には、金属、セラミック、ジルコニア、レジンなど、さまざまな材料が使用されています。

材料によって、強度、色、加工方法、厚み、重量などが異なります。

前歯では自然な透明感や色調が重視され、奥歯では強い咬合力へ耐える性能が求められます。義歯では、強度だけでなく軽さ、装着感、修理のしやすさも重要です。

そのため、すべての症例へ同じ材料を使えばよいわけではありません。

歯科医師の設計や指示を確認しながら、製作物の部位、形、厚み、使用条件に適した加工方法を選びます。

近年では、CAD/CAMと呼ばれるデジタル技術が広く活用され、設計から加工までの精度と効率が高まっています

今回は、材料の特性を理解し、デジタル機器と手作業を組み合わせる歯科技工所の技術について紹介します。

金属材料を正確に扱う技術

金属は、強度や耐久性が求められる技工物に使用されます。

金属材料には複数の種類があり、硬さ、比重、溶解温度、加工性などが異なります。

鋳造によって製作する場合は、ワックスで形を作り、埋没材で型を作り、溶かした金属を流し込みます。

この工程では、ワックスの収縮、埋没材の膨張、金属の収縮などを考えなければなりません。

わずかな変形でも適合へ影響するため、温度と時間を管理します

鋳造後は、余分な金属を除去し、表面を研磨します。

削りすぎると形や厚みが変わり、足りなければ表面が粗いままになります。

セラミックの透明感を生かす

セラミック材料は、天然歯に近い色や透明感を表現しやすいことが特徴です。

前歯など、審美性が重視される部位で使用されることがあります。

セラミックは、複数の色や透明度の材料を重ね、焼成して仕上げます。

一度に厚く盛りすぎると、焼成時に形が変わったり、内部へ気泡が残ったりする可能性があります。

層ごとに厚みを考え、焼成後の収縮を予測します

温度設定、昇温速度、保持時間などが色や表面状態へ影響します。

同じ材料でも、焼成条件が違えば発色や透明感が変わるため、窯の状態と工程を細かく管理します。

ジルコニアを設計する技術

ジルコニアは、高い強度を持つセラミック系材料として活用されています。

ブロックやディスク状の材料を機械で削り出し、その後に焼結して最終的な強度と寸法へ仕上げます。

焼結前の材料は、最終的な大きさより大きく加工されます。

焼結時に収縮するため、専用ソフトウェアが収縮率を考慮して加工データを作ります

しかし、ソフトウェアへ任せるだけでは十分ではありません。

薄すぎる部分がないか、連結部に必要な強度があるか、咬合面が鋭くなりすぎていないかを確認します。

強い材料でも、設計が不適切であれば破損のリスクが高まります。

レジン材料の特性を理解する

レジンは、義歯床、人工歯、仮歯、装置など幅広い用途で使われます。

硬化方法や性質によって複数の種類があります。

液体と粉末を混ぜて重合する材料では、混合比、温度、時間を適切に管理します。

重合時には収縮や発熱が生じるため、模型への適合や内部の気泡へ注意が必要です。

未重合成分が残らないよう、指定された条件で処理します。

完成後は表面を滑らかに研磨し、汚れが付きにくく清掃しやすい状態へ仕上げます

材料の厚みを確保する

技工物は、薄ければ見た目が自然になるとは限りません。

材料ごとに、強度を保つために必要な厚みがあります。

削る量が限られている症例では、材料の選択や形態設計を慎重に行います。

咬合面が薄すぎると、使用中の力によって割れたり変形したりする可能性があります。

反対に厚すぎると、対合歯との距離が不足し、噛み合わせを調整できないことがあります。

CAD上で厚みを確認し、危険な部分を色分けして表示する機能も活用されます

口腔内スキャンデータを読み取る

デジタル技工では、歯科医院で採得した口腔内スキャンデータを受け取り、模型を使わずに設計することがあります。

データには、支台歯、隣接歯、対合歯、歯ぐきなどが記録されています。

ただし、スキャンデータに欠けや重なりがある場合、正確な設計ができないことがあります。

境界部分が明確に読み取れるか、不要な部分が混ざっていないかを確認します。

不明点がある場合は、無理に推測せず、歯科医院へ確認します

デジタル化によって情報伝達は速くなりますが、受け取ったデータの品質を判断する技術が必要です。

CADで歯の形を設計する

CADソフトウェア上では、歯の形を選び、隣接歯や対合歯へ合わせて調整します。

歯の高さ、幅、接触点、咬合面、縁の位置などを画面上で確認できます。

標準的な歯の形を呼び出せる場合もありますが、そのまま使うのではなく、患者様の歯列へ合わせます。

左右の歯、反対側の歯、周囲の形を参考にし、自然な輪郭へ整えます

咬合接触の強さや材料厚みを数値や色で確認できるため、設計の再現性を高められます。

しかし、画面上で滑らかに見えても、加工機の刃が届かない細かな部分があることにも注意が必要です。

CAMで加工条件を設定する

CADで設計したデータは、CAMソフトウェアを使って加工機用のデータへ変換します。

材料ブロックのどこへ配置するか、どの工具を使うか、どの順序で削るかを設定します。

複数の技工物を一つのディスクから加工する場合は、材料を無駄なく使える配置を考えます

ただし、端へ寄せすぎると加工中に材料が欠けたり、固定部分が不足したりする可能性があります。

加工時間と精度のバランスも重要です。

粗削りと仕上げ削りを組み合わせ、細部を再現します。

加工機を日常的に管理する

CAD/CAM加工機は高精度な設備ですが、日常的な清掃と点検が必要です。

加工くずが内部へたまると、機械の動作や集じん性能へ影響します。

切削工具は使用する中で摩耗します。

摩耗した工具を使い続けると、表面が粗くなったり、細部が正確に加工できなくなったりします。

使用回数や加工時間を管理し、適切な時期に交換します

機械の校正も重要です。

わずかな位置ずれが技工物の適合へ影響するため、定期的に精度を確認します。

3Dプリンターを活用する技術

歯科技工所では、模型、個人トレー、仮歯、装置などの製作に3Dプリンターが使われることがあります。

液体材料や樹脂材料を層ごとに積み重ね、デジタルデータから立体物を作ります。

造形方向によって、表面の滑らかさ、精度、支持材の位置などが変わります。

細かな部分へ支持材が付くと、除去時に形を傷める可能性があります。

造形後には洗浄や二次硬化などの工程が必要です

指定された条件を守り、未硬化材料を残さないようにします。

デジタルと手作業の境界を見極める

機械加工によって一定の形までは作れますが、最終的な咬合、接触、表面の質感などは手作業で調整することがあります。

歯科技工士は、加工品を模型やデータ上で確認し、必要な部分だけを少しずつ削ります。

研磨、着色、表面の凹凸など、人の感覚が必要な工程も残っています。

機械の精度を過信せず、完成品として問題がないかを確認することが重要です。

デジタル技術は職人の代わりではなく、職人の設計と判断を正確に形へ変える道具です

データ管理とセキュリティ

デジタル技工では、患者様の口腔内情報や症例データを扱います。

データを誤った症例へ使用しないよう、患者識別情報、受注番号、歯式などを正確に管理します。

データの送受信には、適切な方法を使い、不要な共有を避けます。

バックアップを行い、機器故障時にも必要な情報を失わないようにします

便利さだけでなく、情報を安全に扱う体制も技工所の重要な技術です。

材料の特性を知ることが品質をつくる

歯科技工所では、金属、セラミック、ジルコニア、レジンなどを目的に合わせて使い分けます。

材料の強度、収縮、加工性、色調を理解し、製作工程を調整します。

歯科技工所業における材料・デジタル技術とは、高性能な機械へデータを送ることだけではありません。

症例に必要な性能を考え、材料を選び、適切な形と厚みを設計し、加工後に人の目と手で完成度を高める技術です。

機械の正確さと歯科技工士の経験が組み合わさることで、機能性と美しさを兼ね備えた技工物が生まれているのです